無農薬の庭

土と水の研究日誌

私が無農薬で庭を管理し始めたのは、約10年くらい前です。

グリーンカーテンが流行り、光熱費が安くなるならときゅうりを育て始めました。

きゅうりはよく実り、知らない虫が来るようになり、園芸は面白い…と思いだしたのです。一方で虫が増えました。

そこでホームセンターとかでよく売っている虫の駆除剤を使ったのです。

あんまり何も考えておらず、たまたま家にダンゴムシなどにと書いてある殺虫剤をダンゴムシが固まっているところにまいてみました。

思えばそれが無農薬の庭の始まりです。

虫にも優しい世界を

駆除剤の威力はすごいものでした。撒いたとたん、ダンゴムシが今まで見たこともないような動きをしました。

苦痛にのたうつとはこのことじゃないかというほど、体をよじり、がくがくと奇怪な動きをしていました。

虫なのに。ダンゴムシなのに、苦しいんだと思うと、たかがダンゴムシ、されどダンゴムシで、駆除剤ではない方法はないのかと思いました。

野菜を育てていると特に「害虫」のことが問題になりました。

きゅうりを育てているときよく来たのが、ウリハムシという虫でした。

他にも羽虫がたくさん発生しました。

害虫に関してネットで調べると、殺虫剤を撒く、手で駆除するなど虫を殺す方法ばかり書いてありました。

私もいつの間にか、害虫=駆除が当たり前だと思っていたんですね。

駆除剤ではない方法を求めて、ホームセンターにいくと、虫が寄ってくる習性を使って捕まえる方法などがありました。

確かにそれも寄ってきました。でもそれも殺すことには変わりません。

でも広い畑ではこれは可能なのかなどコストを考えたり、どこまでも駆除し続けるのかなどを考えると、なんとなくそれがナンセンスに思えるのです。

無農薬で管理するという方法

どう探したのかは覚えていないのですが、殺虫しない方法をさがしていた私が見つけたのは「無農薬でバラ庭を」という本でした。

これがまた名著で、バラを育てることだけではなく、無農薬で庭や植物をどう管理するか、無農薬で管理するとどういうことが起こるかということを書いてありました。

その中で私がすごく興味を引かれたのが、土ごと発酵させるということです。

土を掘り返さなくても大丈夫なんだということになんて能率的なんだろうと、機械的に思ったのですが、その土を発酵させるというのは土の中の微生物を活性化させることで土を畑のようなふかふかとしてかつ保水性に優れたものにするというとても奥の深い世界のことが書いてありました。

菌糸はどのように生えるのか。

土の中の微生物に私たちの日常はどれだけ助けられているのか。

そういったことにすごく感銘を覚えました。

また読みたくなりますね…。

この土をよい土にしていくことで、植物が強くなり、また虫もよびよせ害虫の被害が少なくなるというものでした。

※話は変わりますが、無農薬でリンゴを育てた奇跡のリンゴという本もあります。

こちらも同じというには失礼だとは思いますが、似たような経緯をたどります。

すごく勉強になる本です。

まずは土なんだと思い、この発酵という言葉をキーワードにぬかのこと、たい肥のこと、いろいろ調べていきました。

農家の方々はとっくに知っていて、ぬかを利用してよい作物を作っていましたし、より良いものを作るためにすごく研究をされているということでした。土の成分、落ち葉の種類によって異なってくる腐葉土の成分など、数字で証明されていました。

農業は科学なんだと思った瞬間でした。

農業の本になるとあまり虫のことは書いていないのですが、強い作物を作ることで連作をしても育ち、病気にならない野菜の作り方は、小さいマンションの庭で植物や野菜を育てる私にはすごく参考になるものでした。

無農薬は勇気がいることかもしれない?

農業の世界にまで一瞬足を突っ込み、勉強しながら、無農薬で庭を管理することを始めました。

ぜひ本を読んでほしいのですが、私がやった方法も無農薬でバラ庭をに沿った方法です。

ぬかをまきます。

簡単に言うとそれだけです。(著者様はもっと他にも工夫されていましたし、注意点がいくつかあります。)

ぬかをまくと、団粒層や、菌糸が出てきます。

それもすごく面白いのですが、さらに虫が変わり始めるのが面白いです。

虫が大量発生するのです。それも1種類があるとき大量に発生し、そしていなくなります。さらにまた違う種類の虫が大量発生します。

どれも多くなったからといって壁を埋め尽くしたり、バッタの大量発生のように草を食べつくすなんて、乱暴なことは起こりません。

ただ多いとは観察していてわかるのですが、それだけでした。

何も悪さはしなかったです。

でもそのうち自然と、虫の種類が増えてきました。

今まで見かけなかった虫が出てきます。

私はそれを見守るだけです。観察するのが仕事でした。

なのでお任せするしかありません。いい方向に行きますから、虫たちの力に任せて見守ることしか人はできない、その変化を楽しむのが私は楽しかったです。

自分の作った庭が植物がどうなるのかと思われるかもしれませんが、悪い方向にはいかないと信じ、また防御策をはるのは一つの方法です。

ハナムグリなどバラにとって良くない虫も来ます。私もちょっと前、バラを育てていたのですが、確かにハナムグリがバラの根元に潜っていくところを見たときは衝撃でした。

これは防ぎようがないじゃないかと。

でも土の上に目の細かい網をはり、上から土をかぶせて目立たないようにさせれば、ハナムグリは根っこを食べにはいきません。

そのおかげか、バラが根を食われて弱ることはありませんでした。

虫が及ぼす変化で悪いところはそっと起こらないようにし、よい変化はぐいぐい起こしてもらうようにする、それが私が思う無農薬の庭の管理です。

虫の種類の豊富さは生態系の豊かさの証明

虫のなかでも、新顔が来てくれたのを見つけると嬉しくなります。

ありきたりな虫というと失礼ですが、アリやダンゴムシなどは普通にいるので、見てもあまり感激はありませんでした。

でもトックリバチが巣をつくっていたときは、感激しました。

今まで見たこともなかったですから。

アブもこんな街中で見たことがなかったですね。大きなアブが物干しざおの上で、どーんと止まっているのです。私が通っても何ともないような顔をして、微動だにしません。

最初はあまりにでかくて、でもトンボにしては不細工で、何者だかわからずこちらが怖がっていたものです。でもよくよく私が相手を見ても、彼が動じないのです。不思議ですよね。

そのうち、そのアブはなわばりをもってそこにいる羽虫をとらえてくれるということがわかりました。それもアブがくるとわかってから、調べて知ったことでした。

今はそこまでの大きな変化はなく、ちょっと寂しいくらいです。

でも毎年のようにモッコウバラにはチュウレンジハバチが卵を産みに来て、チュウレンジハバチの幼虫がかえると、その幼虫をねらったアシナガバチが来ます。

アシナガバチは本当に働き者で、一つ一つの枝を嘗め回すようにチェックしてくれます。

そのうち幼虫は姿を見なくなります。モッコウバラは虫一ついない、ちなみに葉もない裸の枝が残ります。(蛇足ですがきっとチュウレンジハバチは生き残り、また卵を産みに来るんでしょうね。)

葉がない新しい枝でも、次の年にはモッコウバラはまたきれいな花を咲かせます。なのであまり心配はしていません。

またモッコウバラはよく蜜を出します。新芽が特にそうです。その新芽にアブラムシがたかります、そのアブラムシはテントウムシに食われます。

テントウムシはよく見ます。

テントウムシの一齢幼虫なんて見たこともなかったのですが、モッコウバラの先端で、夏の今頃は今ではよく百日紅の木で蛹の状態をみかけます。彼らも働き者です。

変な話ですが、人間にとっての害虫は草食です。益虫は肉食です。

世の中一般ではハチなんて嫌われ者だと思いますが、私にとっては尊敬の対象でしかないですね。

またクモもしかりです。我が家ではクモは殺すべからずの御触れを出しています。ほっといて何も問題ありません。コバエや羽虫などを食べてくれます。

そのクモもきっと何かに食べられているのでしょう。

こういう回りまわる世界が庭にできあがっていくのが、とても面白いです。

豊かになる虫の種類と生態系

庭には小さいながらも多種多様な虫がいるようになりました。

(でもまだまだだと思うので、もっと来てほしいですね。)

アリのような見かけのクモが糸をたらし、

温かいとしょっちゅうシジミチョウが飛び、

カマキリが草陰にいます。

そしてトカゲが日向ぼっこしにくさから顔をだします。

日向ぼっこしているトカゲはなわばりがあるようで、いつも同じ場所でご対面します。

ニホンカナヘビもみましたが、彼はその後会っていないですね。ぜひ居ついてくれてると嬉しいですが。

こんなに虫が多いですが、嫌な虫もいっぱいいます。

ナメクジ、ダンゴムシ、ヤスデはごろごろいます。家にもよく入ってきます。

自然が多い畑ではそこまでではないかもしれないですが、都市部ではしょうがないかもとあきらめています。

でも彼らがいて枯葉や枯れた植物を分解してくれるから、土が栄養を補充し、柔らかくなるんだと思います。

一時、駆除を頑張ったのですが、無意味だと感じてやめています。

やめましたが、やはり野菜の育ちにそれほど違いを感じません。

ナメクジなどが襲うのは弱った植物や野菜です。

元気なものは襲ったとしても、ダメになるほどではありません。

だからこれも彼らにお任せです。

生態系や彼らの活動を促進するのが、ぬかです。

ぬかは微生物の働きを活発にします。葉の上の菌を元気にし野菜や植物を元気にし、土では土の中にいる微生物を活発にし、森の中のように菌糸をはやします。

私も気づかなかったですが、森の中はかび臭いことが時々あります。でも悪いかび臭さではないです。

それが私の庭でも起こります。

腐った葉などをひっくり返すと、かび臭いです。白い菌糸ならば害はないと本にあるとおり、悪さをされたことはありません。菌が土を耕し、葉を粉々にし、働いています。そのため白い菌糸が見えると、私はうほーと気持ちがあがります。

自然は声をあげないです。

それでも24時間、静かにしっかりと生きている、それを感じます。

彼らは働き者です。

生態系が多様になるとどう良いのか

論文で書いているような立派なことはきっと言えませんが、生態系が多様になりつつある私の庭ではどう良いのかを書きます。

害虫が目立たない

害虫が出て困った、ということはありません。

葉を食べつくされた、と思うのは、モッコウバラぐらいですが、それも別に食べていいものなので構いません。モッコウバラはタフなので、それでも来年はまたきれいな花を咲かせてくれます。

蚊ももちろんいますが、自然が多めの割には少ないと思います。それでも刺されますが、自分に虫よけはあまりつけません。

またコバエなどはあまりお目にかかりません。

コバエがわいたのは、私がボカシを作ったり、私が何かを失敗した時です。

腐葉土をほっといて発酵が進んでしまった時は、あけたらコバエがわいて、ぶわっと出てきました…。

ちょっとびっくりしますが、それも私の管理不行き届き。腐葉土はほぼ土になっていました。

そのわいたコバエは散り散りになり、その後は知りません。

コバエの群れに出くわすこともないので、どこかで誰かの餌になったのだと思っています。

何かが異常に沸いたときは、何かの信号だと思っています。でもそれは自然や虫のミスではなく、私のミスです。わかりやすいですね。

病気がない

木や植物が病気になることがありません。

私の育て方が雑なので、たくましい植物しか残っていないのかもしれませんが、うどん粉病もあまりないです。

他にも山ほど植物の病気はあると思いますが、植物が病気で枯れていくのは、あまり見かけていない気がします。

もっと前は、自分の庭の傾向を知らず、適さない場所に植物を植えて、枯らしてしまったことなど数えきれないほどありますが、最近はそれがないからかもしれません。

植物たちはたくましく育っているように思います。

手間が減る

今更ですが、害虫駆除をしないので、植物や野菜を育てる手間が減ります。

虫の管理は虫がしてくれるので、害虫駆除は私の仕事ではあまりありません。

でも代わりに小さな庭なので、育ってきた植物たちを選定したり、雑草をこまめに取り除くのが私の仕事です。

まめにとってあげないと色々なものを巻き込んで、レイアウトを崩します。

育ってほしくないものもあります。

一方で育ってほしいものもあります。

貧乏草はあまり好まれないかもしれませんが、バッタなどの葉を食べる虫用に取っておいています。

虫に食われないタフな植物というのは、虫からすると食べるところがないのだと思います。

そうすると余計なものが食べられかねないので、食べてもいい雑草を残します。

そうすることで虫が植物に手を出さなければそれでよいと思っています。

自然界のドラマが見られる

生態系ができるというのは食って食われる関係ができるということだと思います。

バッタなどはヤモリやトカゲの餌になっているはずです。

彼らは生態系では上位なので、彼らにぜひ生き残ってほしいです。

ゴキブリなども寄せ付けないでいてくれるかもしれません。

(蛇足ですがマンションはゴキブリが多いです。台風の日に壁をよじ登っているゴキブリを見たときはぞっとしました。)

また虫を食べに鳥にも来てほしいところです。

前はヨトウムシを食べにスズメが来ていました。

夜、害虫駆除をするのに一時はまっており、ヨトウムシを割りばしでつまんでは陶器の入れ物に入れて、庭に置いておきました。

すると翌朝、スズメがヨトウムシらしき幼虫をくちばしでつまみ、地面にたたきつけて失神させて?食べていたのを見たのです。

あれはなかなかの衝撃でした。

生きることが支えあっている環境を作っているのは、虫や植物や土たち自身。

私はその一部を見ているだけにすぎません。

本当は生態系の一番下に、土という層をいれてほしいです。

土が豊かだから、その上に小さな虫が増えます。

その小さな虫が増えるほどにさらに上の虫ができあがる、植物が育つ、結果さらに大きな生き物が来れるようになる、のだと思います。

土がよい土であることがいかに大切なことかを日々実感します。

自然が豊かな方が人に害がない

絶対ではないかもしれません。

でも自然が豊かな方が、人には害は少ないように感じます。

それは管理を伴わないことではありません。

適度な管理を人がすることは必須だと思います。

プラスすることはプラスし、マイナスすることはマイナスしないといけないと思います。

その加減を私が大きな顔をして言うことではありませんが、よく育っているかどうかがその証明か…とは思います。

あとはマンションなので、周りに迷惑にならないことが大事ですよね…

私もまだまだ精進と思いつつ、少しでも良い庭を作っていきます。

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